在宅医療とSNS

今日は、ついつい溜まってしまいがちの事務作業を自宅で行っておりました。大学病院時代は膨大な書類と格闘するような生活でしたので少しはデスクワークに慣れているつもりでしたが、あの当時よりいくつか歳を取ったせいか根気が失われているようで、書類作業にも少し飽きてきたので気分転換をかねて普段の訪問診療業務の一端をご紹介したいと思います。

どの分野でもそうだと思いますが、在宅医療・介護の分野でも様々な職種の間での密な連携が重要なことは言うまでもなく、迅速な情報共有はとても大切です。これまでは電話やFAXが情報共有の中心でした。ただし電話にしてもFAXにしても、伝えられる相手は1回の通話・送信につき1人のみであり、一度に複数名の相手に同じ情報を送ることができず効率が悪いことが難点でした。しかもFAXはクリニックにいないと受け取ることができず、送ったほうも情報を見てもらえたかどうか知ることができないためFAXを送信した後に確認の電話を入れないといけないこともしばしばです。そして、休み明けには休日中に届いた大量のFAXの紙に慌てることになるわけです。

かのLINEはそうした不便さを克服したツールとして、今や老若男女を問わずスマホに無くてはならないアプリになりました。そして在宅医療の現場でもこのLINEのようなSNSアプリがいくつか開発されています。ここ亀山市では、「バイタルリンク」というアプリが広く使われております。このバイタルリンクは、亀山市だけではなくお隣の津市や鈴鹿市の在宅医療の現場でも広く使用されており、当院も鈴鹿市や津市の事業所さんと一緒にお仕事をさせていただく時もスムーズな連携を可能にしてくれています。

医療用のLINEと言いましたが、まさにLINEのように患者さんの情報がリアルタイムに入ってきますので、今日のように自宅で事務作業に追われていても「〇〇さんは今日はお元気でした」とか「□△さんはお食事を楽しそうに召し上がっていました」と聞けば安心ですし、「今日は少し痛みがありました」とか「ご家族が少し介護にお疲れのようです」となれば「痛みの様子に注意しながら次の手を考えておこう」とか「介護サービスについて担当のケアマネージャーさんと相談しよう」など明日からの訪問診療の準備を整えることができたりして大変助けられています。LINEと同じように写真を添付することも可能ですので、お食事の内容とか褥瘡の様子など言葉では説明しにくい情報もリアルタイムに共有でき、たとえその場にいなくても対応方法を指示することも可能になりました。前職の時はこうしたICTツールを用いることがほとんどなく主に電話とFAXでやりとりしていましたが、今やこのバイタルリンクなどの医療用SNSなしでの在宅医生活は考えられなくなっているほど、もはや便利を通り越して必須とも言えるツールになっています。

今日は祝日ですが、訪問看護、訪問介護あるいはデイサービスなど介護サービスの事業所さんは祝日でもお仕事をしているところも多く(お疲れ様です)、今こうして書いている最中にもバイタルリンクの着信が入ってきます(ありがとうございます)。パソコンでもスマホでも見られますので、こうしてパソコンで仕事をしながらもすぐに患者さんの状態を確認し、必要時には返事を書くこともできます。LINEと異なる点は、LINEは既読者の数は表示されるものの誰が既読で誰が未読かまでは知ることはできませんが、医療用SNSの多くは誰が未読かも知ることができるため伝えたい相手に情報が伝わらないというストレスもありません。また、セキュリティに関しては国のガイドラインに則ったものであり普通のSNSアプリに比べてはるかに厳しいセキュリティがかけられているとのことです(当然といえば当然ですが)。私自身はパソコンとクリニック携帯と自分のプライベート携帯にこのアプリを入れ、着信が入ればリアルタイムにアラームが鳴るよう設定しており、届いた情報はできるだけ早くチェックするようにしています。

そういうわけで、訪問診療中に私から様々な電子音がするかもしれません。当院では訪問診療中のほとんどの患者さんでこのバイタルリンクを使用させていただいておりますので、多い時は数分毎に「ピコン」「ピコン」と着信音が入ってきます。ご迷惑と思いますが、それだけ多くの関係職種の皆さんが迅速に情報を送って下さっている証拠でもあり、安心・安全な在宅医療につながるものでもありますのでご理解・ご協力賜りますようお願い致します。

こうして便利で有効なSNSではありますが、文字だけでは伝えきれない情報も少なくありません。人と人とが直接関わる医療・介護の世界だからこそ、文字では伝えきれない心の内面などの部分については直接コミュニケーションを取ることもまた大切なことだと思いますし、こうしたSNSのために関係職種の皆さんの負担が増えるのも本末転倒な話です。道具に振り回されないように気をつけながら、便利に使いこなせるよう気をつけていきたいと思っております。

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みえ在宅医療クリニック 内科 ・ 疼痛緩和内科
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